広告でできることは、実は少ない。

広告はメッセージを「受け取ってくれるひとが受け取りやすくする」だけだとずっと思ってる。

ただ、広告をつくる過程で「いろんなひとの思いがひとつになることで、キャンペーンが成功する」というのは十分ありえる話だ。むしろ、そういう仕事はとても楽しい。

 

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チリという国は、1973年9月11日、アウグスト・ピノチェト(Augusto José Ramón Pinochet Ugarte)による軍事クーデターによって独裁政権になった。

 

1973年9月11日、アメリカ合衆国の後援を受けたアウグスト・ピノチェト将軍らの軍事評議会がクーデターを起こしてモネダ宮殿を攻撃すると、降伏を拒否したアジェンデは死亡し、チリの民主主義体制は崩壊した。翌1974年にピノチェトは自らを首班とする軍事独裁体制を敷いた。

 

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このピノチェト軍政の治安作戦は苛烈を極め、軍内の死の部隊や秘密警察「DINA(英語版)」によるコンドル作戦(汚い戦争の一種)により、人民連合派をはじめとする多くの反体制派の市民が弾圧された。後の政府公式発表によれば約3,000人、人権団体の調査によれば約30,000人のチリ人が作戦によって殺害され、数十万人が各地に建設された強制収容所に送られ、国民の1/10に当たる100万人が国外亡命し、失業率22%、さらには国民の1/4のGNPが「全く」なくなるという異常事態を招き(from wikipedia:チリ

 

独裁が15年続いた後、1988年にピノチェトは国民投票を実施。内容は、1989年3月で任期満了を迎えるピノチェトの任期を更に8年間延長することの是非を問う内容だ。独裁政権の国際的な信頼性を担保するためにピノチェトは勝利を前提に選挙を決定。ピノチェトの独裁に対して、YESかNOかを問う国民投票になった。

下馬評では当たり前だけどYESが優勢。投票による拷問や圧力を恐れてNO陣営は劣勢。そこで起死回生の策として、唯一の情報発信手段だった深夜の政見放送枠に流すCM制作を、マヌエル・サルセドとエンリケ・ガルシアという二人の広告マン達に託した。

 

二人がつくったのは暗い政権批判ではなく、明るくチリの未来を目指すCM。ユーモアを交え、広告の王道で人々の心を動かすクリエイティブで、政治を動かそうとした。実際に流れたCMがこれ↓(実はもっとある)。

 

 

 

映画「NO(ノー)」は、NO陣営にたった二人の広告マンをモデルにした実話をもとにした話だ。
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ちなみに、映画ではディレクターは二人ではなく、ガエル・ガルシア・ベルナル演じるレネ・サアベドラ一人という設定になってる。

 

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最初はあまり乗り気でなかったレネは、次第に広告マンとしてのプライドをもって制作しながら、NO陣営を勝利に導くというシンプルなストーリー。

 

せっかく動画編集してクライアント試写したのに「こんなの頼んだ覚えない」みたいなこと言われて揉める、みたいな広告あるあるシーンが随所に出てきて、すごい分かるわーソレと思いながら観てました。YES陣営が主人公の上司を使いながら、巻き返しを図ってきても「我々は広告屋の流儀で戦うんだ」と一歩も引かない主人公がカッコ良かったです。命をかけてCMつくるってすごいよな。

 

 

映画のなかで使われた映像のほとんどが、当時のCMフィルムなんだそうだ。

個人的には、毎日放送する映像をどんどん作りながら、チームの全員が前のめりになっていく様子が好きだった。カメラマンは「置いてあるものがリアルじゃない」と反発し、レネは「暗い。もっと明るい雰囲気にできないか」と皆が反発しながらも、良いものをつくっていこうと進んでいく。

この「どんどん良くなっていく」っていう状況、実は仕事ではすごく難しい。難しいけど、こういう仕事は、とても楽しい。甲子園とかでたまに、初出場だけど試合を重ねるごとにどんどん強くなっていくチームってあるけど、あんな感じだ。ああいうチームを引っ張っていけるようにしたいなあと常々思う。
トレイラーはこちら。

 

脚本がちょっと都合良すぎじゃないかとか、演出に盛り上がりが欠けるなとか、いろいろ思いましたがオススメ。

 

THD_0629_poster.400x400-75NO(字幕版)

フリーの広告マンとして忙しい日々を送っているレネ・サアベドラ(ガエル・ガルシア・ベルナル)のもとに、かねてからの友人ウルティア(ルイス・ニェッコ)が訪ねてくる。ウルティアは近く実施される政権の信任継続を問う国民投票の反対派「NO」陣営の中心人物であった。今回、投票までの27日間、政権支持派「YES」と反対派「NO」それぞれに1日15分のPR ができるテレビ放送枠が許され、広告やCM 制作の責任者としてレネに白羽の矢が立ったのだ。

はじめ、彼の作る資本主義の象徴のようなCMは独裁政権下で弾圧をうけ迫害されてきた党員たちから非難されるが、明るい未来、喜び、そして希望を謳いあげる斬新でウイットに富んだ言葉や映像は国民の心をつかんでいく。

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1ヶ月ぐらい準備して臨んだ競合コンペ(広告会社が集まって、ひとつの広告を提案しあってバトルで決める発注方法)に2年ぶりぐらいに負けて(割と凹んだんですが)、緊張の糸が外れたのか体調を崩してなんだかなあと思いながら部屋でダラダラしてたけど、ちょっと元気が出る映画だった。

 

あと、やっぱり人を動かすのは「音楽」だなと思った。

 

・「NO」(Official Website)

・NO(Wikipedia)

 

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